【2026年最新版】中小企業が対応すべき労務・社会保険の制度改正6選

2026年は、女性活躍推進法の改正や障害者雇用率の引き上げに加え、カスタマーハラスメント対策の義務化など、中小企業の労務管理に大きく関係する制度改正が行われます。

特に2026年10月1日には、カスタマーハラスメント対策、求職者に対するセクシュアルハラスメント対策、同一労働同一賃金に関するルールの改正が同時に施行されます。

「知らないうちに対応が遅れていた」ということがないように、改正内容と会社が準備すべきポイントを確認しておきましょう。

この記事では、2026年8月2日現在の情報に基づき、中小企業の経営者が押さえておきたい6つの制度改正を分かりやすく解説します。


2026年の主な労務・社会保険制度改正一覧

時期主な改正内容主な対象
2026年4月1日女性活躍推進法に基づく情報公表義務の拡大常時雇用する労働者が101人以上の企業
2026年4月1日雇用保険料率の引き下げ雇用保険に加入する事業主・労働者
2026年4月分から子ども・子育て支援金制度の開始医療保険に加入する事業主・被保険者
2026年7月1日障害者の法定雇用率を2.7%へ引き上げ常用雇用労働者37.5人以上の民間企業
2026年10月1日カスハラ・求職者等セクハラ対策の義務化すべての事業主
2026年10月1日同一労働同一賃金に関するルールの改正パート・有期雇用労働者等を雇用する企業


1.女性活躍推進法の情報公表義務が拡大

2026年4月1日から、常時雇用する労働者が101人以上の企業では、次の2項目が情報公表の必須項目となりました。

・男女間の賃金差異
・女性管理職比率

これまで、男女間の賃金差異の公表義務は主に301人以上の企業が対象でしたが、改正により101人以上300人以下の企業にも対象が広がりました。

また、女性管理職比率についても、101人以上の企業に公表が義務付けられています。100人以下の企業については努力義務です。

会社が準備すること

対象となる企業は、次の点を確認しましょう。

・自社の「常時雇用する労働者数」を確認する
・男女別の賃金データを整理する
・管理職の定義と女性管理職比率を確認する
・公表する場所と担当者を決める
・数値に差がある場合は、その背景や改善策を整理する

初回の公表は、2026年4月1日以後に最初に終了する事業年度の実績について、次の事業年度が始まってからおおむね3か月以内に行うこととされています。自社ホームページや、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」などを利用して公表します。

単に数字を掲載するだけでなく、「なぜ差が生じているのか」「今後どのような改善を行うのか」まで説明できるようにしておくことが重要です。


2.雇用保険料率が引き下げ

2026年4月1日から2027年3月31日までの雇用保険料率は、前年度より引き下げられました。

一般の事業の場合は、次のとおりです。

負担者2026年度の料率
労働者負担5/1,000
事業主負担8.5/1,000
合計13.5/1,000

農林水産・清酒製造の事業や建設業は、一般の事業とは料率が異なります。

会社が準備すること

・給与計算ソフトの雇用保険料率を変更する
・2026年4月以降に支払う給与の控除額を確認する
・労働保険の年度更新に使用する料率を確認する
・給与計算を外部へ委託している場合は、変更状況を確認する

古い料率のまま給与計算を続けると、従業員からの控除額に誤りが生じます。給与計算ソフトが自動更新される場合でも、設定内容を一度確認しておきましょう。


3.子ども・子育て支援金制度がスタート

2026年度から、子ども・子育て政策の財源となる「子ども・子育て支援金制度」が始まりました。

会社員などの被用者保険に加入している人については、標準報酬月額や標準賞与額をもとに支援金が計算されます。

2026年度の被用者保険の支援金率は0.23%で、原則として労働者と事業主が半分ずつ負担します。2026年4月分の保険料から対象となり、一般的な翌月控除の会社では5月支給給与から控除が始まります。賞与も対象です。

会社が準備すること

・加入している健康保険制度の取り扱いを確認する
・給与計算ソフトを更新する
・給与明細の表示内容を確認する
・従業員への説明を準備する
・会社負担分を人件費として見込む

新しい控除項目について従業員から質問を受けることも考えられます。制度の目的や、会社と従業員の双方が負担する仕組みを説明できるようにしておきましょう。


4.障害者の法定雇用率が2.7%へ引き上げ

2026年7月1日から、民間企業における障害者の法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられました。

これに伴い、障害者を1人以上雇用する義務が生じる企業の範囲も、常用雇用労働者40人以上から37.5人以上へ拡大されています。

「37.5人」という基準では、単純な在籍人数だけではなく、週の所定労働時間などに応じた短時間労働者の算定方法にも注意が必要です。

会社が準備すること

・常用雇用労働者数を正しく計算する
・現在の障害者雇用人数と実雇用率を確認する
・不足する場合は採用計画を検討する
・仕事内容の切り出しや職場環境を整備する
・ハローワークや地域の支援機関へ相談する

障害者雇用は、採用人数だけを合わせればよいものではありません。

本人の特性や得意分野に合った仕事内容、相談できる担当者、周囲の理解、継続して働ける環境を整えることが大切です。


5.カスタマーハラスメント対策がすべての事業主に義務化

2026年10月1日から、カスタマーハラスメントを防止するための措置を講じることが、すべての事業主に義務付けられます。

会社の規模や業種を問わず対象となるため、従業員数が少ない会社も対応が必要です。

カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先、施設利用者などからの言動のうち、社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害するものをいいます。

正当なクレームや改善の申し出まで一律に拒否する制度ではありません。正当な申し出と、暴言・脅迫・過度な要求などを区別して対応することが求められます。

会社に求められる主な対応

・カスタマーハラスメントを許さないという方針を明確にする
・方針を従業員へ周知する
・相談窓口や報告ルートを整備する
・相談があった場合の事実確認と対応方法を決める
・被害を受けた従業員を保護する
・悪質な行為への対応方針を定める
・管理職や従業員への研修を行う

特に悪質な行為については、警察への通報、警告文の発出、法令の範囲内での商品販売やサービス提供の停止、施設への立ち入り禁止などの対応方針をあらかじめ定め、社内の体制を整備することが示されています。

現場の従業員一人に判断を任せると、対応が遅れたり、従業員が精神的な負担を抱え込んだりするおそれがあります。

「誰に報告するのか」「どの段階で上司へ交代するのか」「録音や記録をどう残すのか」など、具体的な対応手順を決めておきましょう。

6.求職者等セクハラ対策と同一労働同一賃金のルールが改正

求職者等へのセクシュアルハラスメント対策

2026年10月1日から、採用活動やインターンシップなどにおける、求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置も事業主の義務となります。

対象となる場面には、採用面接、会社説明会、インターンシップ、社員訪問、採用担当者と求職者とのSNS上のやり取りなどが含まれます。

会社には、禁止方針の明確化、採用活動上のルール整備、相談窓口の設置、事実確認、行為者への対応、再発防止などが求められます。

採用担当者や現場社員に対して、次のようなルールを明確にしておきましょう。

・業務上必要のない個人的な質問をしない
・性的な話題や冗談を口にしない
・私的なSNSアカウントで連絡しない
・会社が指定した連絡手段を使用する
・面談の時間、場所、同席者を明確にする
・求職者を執拗に食事などへ誘わない

採用活動に関わるのは、人事担当者だけとは限りません。社長や役員、現場社員を含めた周知が必要です。

同一労働同一賃金に関するルールの改正

2026年10月1日から、パートタイム・有期雇用労働者や派遣労働者の待遇に関するルールも改正されます。

主な変更点は、次の3つです。

・雇い入れ時の労働条件明示事項の追加
・同一労働同一賃金ガイドラインの改正
・待遇差についての説明方法の明確化

パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際には、正社員との待遇差の内容や理由などについて、会社へ説明を求めることができる旨を明示する必要があります。

改正ガイドラインには、賞与、退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、福利厚生施設、病気休職、夏季・冬季休暇、褒賞などについて、不合理な待遇差に関する考え方が追加されています。

会社が準備すること

・パート・有期契約社員用の労働条件通知書を見直す
・正社員と非正規社員の手当、休暇、福利厚生を比較する
・待遇差がある場合は、その目的と理由を整理する
・従業員から説明を求められた場合の資料を準備する
・就業規則、賃金規程、雇用契約書の内容を統一する

「昔からこの取り扱いだから」「正社員とパートでは雇用形態が違うから」という理由だけでは、待遇差を十分に説明できない可能性があります。

それぞれの手当や福利厚生について、支給の目的と仕事内容、責任、配置変更の範囲などとの関係を整理することが重要です。


中小企業が優先して取り組みたい5つのこと

2026年の制度改正に対応するため、まずは次の5点から進めましょう。

1.自社がどの改正の対象になるか確認する

従業員数、雇用形態、健康保険の加入状況、障害者雇用人数などを確認します。

2.給与計算の設定を確認する

雇用保険料率と子ども・子育て支援金について、給与計算ソフトや給与明細の設定を確認します。

3.就業規則と社内方針を見直す

カスタマーハラスメント、求職者等セクハラ、懲戒、相談対応などの規定を確認します。

4.労働条件通知書を見直す

パートタイマーや有期契約社員へ交付している労働条件通知書が、2026年10月の改正に対応しているか確認します。

5.管理職と従業員への研修を行う

制度を作るだけでは、現場で適切に運用できません。


特にハラスメント対応では、管理職が相談を受けた際の初動や、顧客対応を一人で抱え込ませない仕組みづくりが重要です。


まとめ|制度改正は「会社と社員を守る仕組み」を見直す機会

2026年の制度改正では、保険料率の変更だけでなく、ハラスメント対策、採用活動、非正規社員の待遇、障害者雇用など、会社の人事労務管理全体が問われます。

大切なのは、書類や規程を作るだけで終わらせないことです。

・社員が困ったときに相談できる
・管理職が迷わず対応できる
・社長が一人で人の問題を抱え込まなくてよい
・雇用形態にかかわらず、納得して働ける

このような職場の土台をつくることが、法改正対応の本当の目的です。

Lif社会保険労務士事務所では、愛知県豊川市を拠点に、東三河・西三河・遠州エリアの小さな会社を対象として、労務管理から採用・人材育成・組織づくりまで伴走支援しています。

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このようなお悩みがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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※本記事は、2026年8月2日現在の法令および公表資料をもとに、一般的な内容を分かりやすくまとめたものです。個別の会社に必要な対応は、従業員数、業種、雇用形態、加入する健康保険制度などによって異なります。実際の対応については、管轄の行政機関または社会保険労務士へご確認ください。