最低賃金の計算方法とは?月給・日給・手当を含む場合の確認方法をわかりやすく解説

最低賃金と聞くと、「時給で働くパートやアルバイトだけの話」と思っていませんか?

実は、最低賃金は時給制の従業員だけでなく、月給制・日給制・出来高払制を含む、原則すべての労働者に適用されます。

特に注意したいのが、月給制の従業員です。

「月給でそれなりの金額を支払っているから大丈夫」と思っていても、時給に換算すると最低賃金を下回っているケースがあります。

今回は、最低賃金の基本的な考え方と、給与形態別の計算方法について、わかりやすく解説します。

※本記事は2026年8月3日時点の情報をもとに作成しています。


最低賃金とは?

最低賃金とは、使用者が労働者に対して支払わなければならない、賃金の最低額です。

地域別最低賃金は、都道府県ごとに定められており、原則として、その都道府県内の事業場で働くすべての労働者に適用されます。

正社員だけでなく、パートタイマー、アルバイト、契約社員なども対象です。

また、派遣労働者については、派遣元の所在地ではなく、原則として派遣先の事業場に適用される最低賃金を確認します。

愛知県の地域別最低賃金は、2025年10月18日から時間額1,140円です。愛知県内の事業場で働く労働者に適用されます。

ただし、一部の産業には「特定最低賃金」が定められている場合があります。地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される場合は、原則として金額が高い方を適用します。


最低賃金の計算に含める賃金

最低賃金を確認するときは、給与の総支給額をそのまま使うわけではありません。

対象となるのは、原則として毎月支払われる基本的な賃金です。

例えば、次のような賃金は、最低賃金の計算対象に含まれることがあります。

  • 基本給
  • 職務手当
  • 役職手当
  • 資格手当
  • 毎月固定で支払われる業務手当

ただし、手当の名称だけで判断するのではなく、実際の支給条件や内容を確認する必要があります。


最低賃金の計算から除外するもの

次の賃金は、最低賃金を確認するときの計算から除外します。

  1. 結婚手当など、臨時に支払われる賃金
  2. 賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
  3. 時間外労働に対する割増賃金
  4. 休日労働に対する割増賃金
  5. 深夜労働の割増部分
  6. 精皆勤手当
  7. 通勤手当
  8. 家族手当

つまり、総支給額が最低賃金を上回っていても、通勤手当や残業代などを除いて計算すると、最低賃金を下回る可能性があります。


給与形態別の最低賃金の計算方法

最低賃金は時間額で定められています。

そのため、日給制や月給制の場合も、賃金を1時間当たりの金額に換算して確認します。

1.時給制の場合

時給制の場合は、現在の時給と最低賃金をそのまま比較します。

計算式

時給 ≧ 最低賃金額

愛知県の事業場で時給1,150円を支給している場合は、現在の愛知県最低賃金1,140円を上回っています。

一方、時給1,130円の場合は、最低賃金を下回ることになります。

2.日給制の場合

日給制の場合は、日給を1日の所定労働時間で割ります。

計算式

日給 ÷ 1日の所定労働時間 = 1時間当たりの賃金

計算例

  • 日給:9,000円
  • 1日の所定労働時間:8時間

9,000円 ÷ 8時間 = 1,125円

愛知県最低賃金の1,140円と比較すると、1時間当たり15円不足しています。

この場合、最低賃金を満たすためには、少なくとも次の金額が必要です。

1,140円 × 8時間 = 9,120円

したがって、8時間勤務の場合の日給は、少なくとも9,120円以上にする必要があります。

3.月給制の場合

月給制の場合は、最低賃金の計算対象となる月給を「1か月平均所定労働時間」で割ります。

計算式

最低賃金の対象となる月給 ÷ 1か月平均所定労働時間
= 1時間当たりの賃金

ここで注意したいのが、「その月に実際に働いた時間」で割るのではなく、原則として1か月平均所定労働時間を使用する点です。

1か月平均所定労働時間の計算例

次のような会社を例にします。

  • 年間所定労働日数:245日
  • 1日の所定労働時間:8時間

年間所定労働時間は、次のとおりです。

245日 × 8時間 = 1,960時間

これを12か月で割ります。

1,960時間 ÷ 12か月 = 約163.33時間

この会社の1か月平均所定労働時間は、約163.33時間です。


月給制の具体的な計算例

次の給与を例に確認します。

  • 基本給:175,000円
  • 職務手当:15,000円
  • 通勤手当:10,000円
  • 皆勤手当:5,000円
  • 月給総額:205,000円
  • 1か月平均所定労働時間:163.33時間

通勤手当と皆勤手当は、最低賃金の計算から除外します。

したがって、計算対象となる賃金は次の金額です。

175,000円+15,000円=190,000円

1時間当たりの賃金を計算します。

190,000円 ÷ 163.33時間 = 約1,163円

愛知県最低賃金1,140円を上回っているため、この例では最低賃金を満たしています。


総支給額だけで判断すると危険です

先ほどの例で、基本給が170,000円だった場合を考えてみましょう。

  • 基本給:170,000円
  • 職務手当:10,000円
  • 通勤手当:15,000円
  • 皆勤手当:5,000円
  • 総支給額:200,000円

総支給額だけを見ると、十分な給与を支払っているように見えるかもしれません。

しかし、最低賃金の計算から通勤手当と皆勤手当を除外すると、対象となる賃金は180,000円です。

180,000円 ÷ 163.33時間 = 約1,102円

愛知県最低賃金1,140円を下回るため、最低賃金を満たしていません。

このように、給与の総額ではなく、最低賃金の算定対象となる賃金だけを取り出して確認することが重要です。


固定残業代がある場合の注意点

固定残業代を支払っている場合、その全額を最低賃金の計算に含めることはできません。

時間外労働に対する割増賃金は、最低賃金の算定対象から除外されるためです。

例えば、月給25万円の中に固定残業代4万円が含まれている場合、単純に25万円を1か月平均所定労働時間で割るのではありません。

固定残業代を除いた基本給や対象手当をもとに、最低賃金を確認する必要があります。

固定残業代を導入している会社では、次の点も確認しましょう。

  • 基本給と固定残業代が明確に区分されているか
  • 固定残業代が何時間分なのか明示されているか
  • 実際の残業代が固定残業代を超えた場合、差額を支払っているか
  • 固定残業代を除いた賃金が最低賃金を下回っていないか


試用期間中も最低賃金は適用されます

「試用期間中だから、最低賃金より低くてもよい」と考えるのは注意が必要です。

試用期間中の従業員にも、原則として最低賃金は適用されます。

最低賃金を下回る金額を設定できるのは、都道府県労働局長から最低賃金の減額特例許可を受けた場合など、限られたケースです。

会社の判断だけで、試用期間中の給与を最低賃金より低く設定することはできません。


最低賃金を下回った場合はどうなる?

最低賃金額に達しない賃金を定めた場合、その部分は無効となり、最低賃金額と同じ金額を定めたものとして取り扱われます。

会社は、不足していた賃金をさかのぼって支払わなければならない可能性があります。

また、地域別最低賃金に違反した場合には、最低賃金法に基づく罰則の対象になることもあります。

最低賃金の不足は、1人当たりでは小さな金額に見えても、複数の従業員について長期間続いていた場合、大きな未払い賃金につながります。


最低賃金改定時に会社が確認したいこと

最低賃金は定期的に見直されます。

最低賃金が改定された際は、時給制のパート・アルバイトだけでなく、月給制の正社員も含めて確認しましょう。

確認項目

  • 事業場に適用される最低賃金額
  • 特定最低賃金の対象業種ではないか
  • パート・アルバイトの時給
  • 正社員や契約社員の月給
  • 試用期間中の賃金
  • 固定残業代を除いた基本給
  • 通勤手当や皆勤手当を除外して計算しているか
  • 1か月平均所定労働時間が正しく設定されているか
  • 求人票の給与額が最低賃金を満たしているか
  • 就業規則や賃金規程の修正が必要ではないか


まとめ

最低賃金は、時給制の従業員だけの問題ではありません。

月給制や日給制の場合も、賃金を時間額に換算し、事業場に適用される最低賃金以上になっているか確認する必要があります。

特に注意したいポイントは、次の3つです。

  • 通勤手当、精皆勤手当、家族手当、残業代などは計算から除外する
  • 月給制は、月給を1か月平均所定労働時間で割って確認する
  • 給与の総支給額だけで判断しない

最低賃金の改定時には、給与計算だけでなく、雇用契約書、求人票、賃金規程などもあわせて見直すことが大切です。

「自社の給与が最低賃金を満たしているかわからない」
「月給制の従業員について、計算方法が合っているか確認したい」
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Lif社会保険労務士事務所では、愛知県豊川市を拠点に、東三河・西三河・遠州エリアの小さな会社を対象として、労務管理、社会保険手続き、助成金、人材育成、組織づくりまで幅広く支援しています。

手続きだけで終わらない「小さな会社の人事部」として、社長が一人で人の問題を抱え込まなくてよい会社づくりに伴走します。

※最低賃金額や制度の取扱いは改定されることがあります。実際の対応にあたっては、最新の最低賃金額や個別の賃金規程・雇用契約の内容をご確認ください。